Bite a Cat!

ジャンル:アドベンチャー
プラットフォーム:Win95/98 (RPGツクール95作品)
作者:重歳謙治さん
種別:コンテストパーク入賞作品(フリーソフト)
ダウンロード先:コンテストパーク過去の受賞作品→RPGツクール95作品
入賞歴など:コンテストパーク1999年10月度金賞(50,000円) , A-CON4 佳作(200,000円),
99年度年間ランキング6位

ゲームの内容:御堂椎馬は、生物学専攻の大学生。大学のレポートを作成するため、 ガールフレンド2人とともに遺伝子研究所の研究ツアーに参加することになる。しかし、 彼らが見学していた最中、突如として研究所はテロリストに襲撃され、研究員達が 次々に惨殺されていった・・・・。主人公達はトイレに行っていたために辛うじて難を 逃れることになる。御堂椎馬は「忍者」という、ひた隠しにしてきたもう一つの 側面を駆使して、テロリストに立ち向かい、ガールフレンド達とともに施設からの脱出を 試みるのである・・・・。


僕がレビューするなんて恐れ多い、そのくらいの完成度の高さ

まず最初に、このレビューは「さすけの視点、つまり斜めから見たレビュー」であることを お断りしておかなければなりません。なぜなら、「一般的な視点」でのレビューは非常に 難しいと判断したからです。
僕は、この「Bite a Cat!」を、非常に完成度が高いだけでなく趣向に凝らされた作品であると 思います。A-CONに入賞したのもコンテストパークで入賞したのも、相応しいとうなずけるし、 何よりノミネート時から凄い評判で、同時にノミネートされていた拙作(ムンホイ、すなわち 「Moon Whistle」のこと)とは比べ物にならないくらいの人気があったと思います。
実際、「Bite a Cat!のような」演出があったほうがいい、と 拙作ムンホイのコメントに書かれていたくらいなのです。それで試しにプレーして即座に 唸らされてしまい、それ以来のファンなのです。

僕はこのゲームには非の付け所がないと思っています。 演出の凄さ、効果音、間の取り方、迫力。そして、キャラクター。さらにシステム面でも RPGツクール95を使いこなしている凄さ、何度も遊べるポイント制。 皆さんの中でも殆どの方がこのゲームを「非の付け所がない」と認めるでしょう。 さらに言えば、ムンホイの世界観がかなりプレイヤーを選ぶのに対して、 明らかに「一般受け(少なくともコンテストパークの年代層では)する」素材です。

しかし、です。万人が「面白い!名作だ!」と賞賛する作品に対して、僕も「このゲームは 面白い!非の付け所がない!」とすなおに言っただけで、レビューになるのでしょうか。 僕がレビューする以上、僕独特の視点を切り出さなければいけない、単なるベタボメは、 かえって失礼だ、そのように感じたのです。

正直言って「Bite a Cat!」は、僕がレビューするなんて、恐れ多いくらいの作品です。あえてそれをしようというのだから 僕も恐いもの知らずです。最悪の場合、僕はもうツクール生命を絶たれるかもしれない(やや大袈裟)、 そこまで思いつつ、この文章をタイプしています。

「ムンホイより面白い!」「当たり前だ!」

とある掲示板で、レドナントやKnight Bladeといった歴代の入賞作品への コメントに、「ムンホイより面白い!」「これもムンホイより面白い!」と 拙作を引き合いに出している人がいました。 その時は、「ああ、恐れ多くも俺の作品が比較対象になっている」と思ったものです。
しかし、です。
僕の方から質問したいのですが、いつからムンホイが判断基準になったのでしょうか。僕は ムンホイは判断基準に相応しくないと思っているのです。 なぜなら、僕はムンホイを「掟破りの作品」と思っており、コンテストパーク作品の中でも ムンホイはかなり「異端」の部類に属すると思う からです。一方、この「Bite a Cat!」こそ、 「短編で引き締まっている」「演出に凝っている」「ツクールの機能をふんだんに使っている」と いう点で、ツクール作品の基準としてあえて挙げるとすれば一番相応しい作品だと思うのです。 もっとも、僕はツクール作品、すなわちアマチュアで「基準」などを設けて「これと比較して〜」 なんていうのは土台無理だとおもうのですが。 (ときメロと「Bite a Cat!」、どちらが面白いか、なんて質問に 明快な解答が出来る方、いますか?無理でしょう。)

閑話休題、僕がムンホイを「掟やぶり」だと言ったのは、コンテストパークらしからぬ長編であるし、 ツクールのテクニックも全然凝っていない(はっきり言ってしまうと、基礎的なものしか 使っていない)し、かなりツクールを使いこなしている人から見ると全然嬉しくない作品なのです。 このような作品を引き合いに出して「レドナントはムンホイより面白い!」「Bite a Cat!は ムンホイより面白い!」と言っても説得力がないと思うのです。 明らかに方向性が違う作品同士で 一般的な優劣をつけるというのは野暮というものだと僕は思います。

しかし、です。一般的な優劣は無理ですが、個人的な趣味に基づく好き嫌いなら話は別です。 そこで僕自身は、個人的に 「僕にとってBite a Cat!の方がムンホイより面白い」と言います。 だって僕はムンホイをプレーしていて、一度も泣きませんでしたから。一度もショックを 受けませんでしたから。なぜなら先が見え見えだからです ・・・・僕が全てシナリオを作ったのだから当たり前かもしれませんが。 そういうわけで、皆さんが「初めてゲームで泣いた」と送ってくれても、どうもピンと 来ないのです。一度僕の前でムンホイプレーして泣いてくれませんか?(失礼!)
ある人はこれを呼んで「謙遜だ」と言ってくれるでしょう。謙遜かどうかは皆さんの判断に 任せます。そういうわけで皆さん、ムンホイと「Bite a Cat!」どちらが「貴方にとって」 面白いか、あるいはジャンルが違うから優劣つけがたいか、どうなのか、は決めてみても いいと思います、それが必ずしも「みんなの意見」にはならないことにさえ注意してもらえれば。
僕だってただ、 自分の判断基準でレビューしているまで、なのですから。

ムンホイと好対照な作品

さて、前節で「ムンホイより面白いのは当たり前」と、思いのままをぶつけてしまいましたが、 やはり「Bite a Cat!」を論じるに当たって、やはり拙作ムンホイを引き合いに出さない訳には いかないと思うのです。 なぜなら、コンテストパークでもA-CON4でも、同じ賞に入賞しているからです。 しかもそれでいてムンホイと「Bite a Cat!」は、 どうしてこんなに対照的なのか、と思うくらい対照的なのです。
ムンホイがコンテストパークで金賞を取ったとき、 「うわ、重歳さんと並んで金賞!?恐れ多いぞ、俺!」と身震いがしていたものですが、 プレーしてみて改めて「同じ金賞でも、ここまで毛色の違う作品なんだなあ」と驚いたものです。

誤解を恐れずに一言で言うと、この2作の最大の違いは、「密度の違い」にあると僕は思うのです。

まず、制作期間の密度が違います。ムンホイはのべ一年以上、足掛け3年かけてだらだらと だらしなく作っていった結果なんとか完成した物です。一方で「Bite a Cat!」は、 なんと一ヶ月で完成させているのです。これだけ見ても、尊敬すべき点だと僕は思っています。
僕はいつか「リスペクトするアマチュアクリエイターは?」と聞かれることがあったら、 その時には真っ先に重歳様の名前を挙げることにしていますが、その最大の理由がここにあるのです。 「短期間で集中して、なおかつハイクオリティの作品が作れる」という点、ここは 僕もかなり反省させられます。

ゲーム内容もそうです。はるかに「Bite a Cat!」の方が濃密なのです。 ムンホイは基本的な機能だけを使った長編です。一方で「Bite a Cat!」は、 短編ですが、きれいにびしっとまとめており、なおかつRPGツクール95を使いこなしている 印象を受けます。

さらに、ファン層にも「密度の違い」があてはまります。僕はムンホイで多くのファンレターを もらいましたが、その中でかなり多くの人が文面に 「普段はあまりゲームはやらないのですが」といった枕詞を付けていました。 つまり、僕のゲームは「普段ゲームをやらない層」に受けた作品、といえます。 一方で、「Bite a Cat!」のことは詳しくは分からないのですが、かなりツクールに 精通している人に受けがよかったように思えます。実際、ノミネート直後からすぐに ツクール関係の掲示板で話題になったこともあって、僕としては凄いと思っています。
一方でムンホイはノミネート時はかなり多くの作品がひしめき合っていたこともあって、 殆ど無名だったし、あまり話題に上らなかったものです。
どちらがいい、といわれると断言は難しいでしょうが、「同じランクの賞を取っているのに こんなに違う」というのがよく分かると思います。

このようにかなり好対照の作品が同じ賞になった、 というよりムンホイが暴走した結果、いつの間にか名作”Bite a Cat!”の隣に来ていた、 という方が適切なのかもしれませんが、 やはりここにデジタルファミ通およびAコンの審査員の恣意的なもの、つまり 「さすけさん、あんたは重歳さんのゲームをプレーして学ぶべきものが多いんじゃない?」 というメッセージを感じるのですが、これは僕の考えすぎでしょうか。
ここで僕が重歳様をリスペクトする2つ目の理由である、「ライフとツクールが 結びついている」という点を挙げたいと思うのです。これは芸術家が芸術のみで生計を立てている 状態を「ライフとアートがくっついている」と言いますが、そのもじりです。 僕はそういう状態にあこがれているのですが、そこにどうしても辿り着けない僕と、 濃密にツクールとともに生きている覚悟が見える重歳様。ここでも歴然とした密度の違いを 感じます。いやはや、このように詳解すればするほど、恐れ多さを ひしひしと感じるのであります。

御堂椎馬様へ、「変な大学生ナンバー1は僕だ!」

さて、このゲームのシナリオについて。このゲーム、主人公達は大学生で、 「大学のレポートを仕上げるために」迷い込んだ遺伝子研究所が舞台、ということなんですが、 僕は惨澹たる大学生活を過ごしたので、申し訳ないが御堂くんにはあまり共感が出来ないのです。 僕にとって、「大学の学部時代」は出来れば思い出したくない暗黒時代なので、 どうしても自分のトラウマが吹き出しそうになるのです。 しかし、逆にそれだからこそ楽しめたのかもしれません。

そう、主人公御堂くんのシチュエーションの設定がうますぎます。女の子2人に囲まれて、 僕の予想では2人が御堂くんをめぐって喧嘩をするかと思ったけど、極限状態で そんなこともなく平和で、・・・・うらやましすぎるぞ〜〜!!!
なんっていうか、理想的すぎて・・・・そもそもオープニングの「一緒に トイレに行こう」って誘うシーンからして、うらやましすぎる!!!
実を言うと僕も裏では忍者やっていたんですが(暴言)、 このようなうらやましい待遇を受けたことは一度もございません。 ゲームのキャラに嫉妬したのは初めてです。ここだけ見ても、僕はこのゲームに 二重丸、三重丸あげたいのですが。

さらに、「鬼神降臨」。このノリに至っては私には一生かかっても出せません。 一度全滅して、そのうえで強くなる、という・・・・なんか「努力、友情、勝利」 って感じ。この味、長編では絶対に出せませんよ。短くまとまった作品だからこそ、 こういう味のある演出に深みが出てくるのです。

あと、あまり深くは触れませんでしたが、何度もプレーしたくなるように、システム面も 充実しています。なんといっても、「ポイント制」を取っていることが挙げられます。 完璧なプレーをすると、ボーナスアイテムも入手できます。ここらへん、「取り敢えずのクリアは 簡単、パーフェクトはやり込みが必要(easy to play, hard to master)」という 秀作の条件を見事に満たしていると思うのです。 ちなみに僕は、未だに「覇王の爪」を手に入れられずに悩んでいます。あれ、 入手出来た方はコツを教えてください(^^;。

全体的に見て、僕はどうしても長編の人なので、短編でびしっとまとめている作品というのは とても惹かれます。僕も一度びしっとまとまった短編を作りたいとは思っているし、 その時はこの作品も参考にすべきなのでしょうけど、こういうノリのよさを見るたびに、 「こういうのは僕には無理そうだな」と思ってしまうのです。そして、自分が作れない作品だから こそ、僕は「Bite a Cat!」に惹かれるのかもしれません。

結論:まだやってない人はとにかくプレーだ!

以上見てきたように、とにかくこの作品、演出とかグラフィックとかそういうのに 鈍い僕が見てさえ、「非の打ち所はありません」。 制作期間からいっても「ツクール作品の鏡」でしょうし、 何より僕ごときがそんな事を言うのは、 「何生意気言っているんだ」とのそしりを受けることを重々覚悟の上、なのです。
もしこのレビューを読んでいる人で未プレーの人がいたら、即プレーしましょう。 このゲームをしないでコンテストパークは語れないと思うのです。 プレー時間もそれほど長くかからないと思うので、「忙しい」なんて言っていないで 取り敢えずやりましょう。なにしろ「密度の濃い」作品です。絶対に損はしないと思うのです。


I might be killed by your comment!アマチュアゲームインプレッションの表紙に戻る Return to the top of this
 site.さすけの妄想劇場のトップに戻る