パンダとウサギ

ジャンル:RPG
プラットフォーム:Win95/98 (RPGツクール95作品)
作者:EISINさん
種別:コンテストパーク入賞作品(フリーソフト)
ダウンロード先:コンテストパーク
入賞歴など:コンテストパーク2000年8月度銀賞(30,000円)

ゲームの内容:動物達が平和に暮らしていたアニマルランドに、突如支配者達が 現れた。その動物の名前は「ウサギ」。ウサギ達の王である「ラビラス」は、 ウサギ王国をつくりあげ、各地の動物達を蹂躙(じゅうりん)、侵略していった。
主人公のパンダ「くまはち」は、そんなウサギ達の行いに対抗すべく、お世話になった 師匠のもとを離れ、冒険の旅に出る。 いく先々で盗賊コンビや研究者(狐のゆうきち)などと出会い、 ウサギ王国の兵隊達と戦っていく。全ての登場人物が動物である点に注目!


ちょっとプレーしただけで惹かれた

まず最初に、私的な話で恐縮ですが、 僕は、コンテストパークにノミネートされたゲームをすぐにプレーする人間では ないのですが、このゲームはノミネート中にプレーしてみたくなりました。 実際プレーして、最初の5分で 「これいい!」と思ってしまいました。 僕をそこまで駆り立てたのは、この雰囲気のよさにほかならないのです。

実際、その後、「これは絶対に入賞して欲しい!僕だったら銀賞にする!でも、 最近ツクール95作品に対する風当たりが強いし、銅賞どまりか?」なんて 考えつつ投票しましたが、銀賞に入賞してくれて、自分のことのように喜びました。

やはり、作者の労力から見て、世界観を引き立てる素材が評価点でしょう。 敵キャラの全てオリジナルのグラフィックや、雰囲気にあった選曲、 そういったものによってかもし出されるファンタジックな世界観が、このゲームの最大の肝だと思います。 これらの素材にかけた労力はなかなかのものだと思います。

親切な設計

さて、ゲームシステムやバランスはどうでしょうか。
これらも、「相当に設計されているなあ」 というのがよく分かります。さくさくと進むことが出来、それでいて適度に 緊張が出来ます。前述の通り、敵のグラフィックが書き換えということもあり、 単純に戦闘が起きるのが楽しみになるのです。

ゲームバランスがとてもいいし、謎解きもすごく分かりやすいです。 きちんと、イベントが起こったあとに「これこれこうすればいいんだな?」のように 聞き返されたりするので、メモがいらない分、「難しい謎解きは苦手」という人も、 きっとお気に入りになると思います。
それでいて、「分かった人だけ分かる」ようなさりげないイベント(エネルギー水晶や、 ウサギの5問テストなど)が含まれており、メリハリがあるのも特筆すべき点でしょう。

しかし何といっても、このゲームのツボは、 シナリオおよび世界観のよさにあるといえます。そして、その秀逸さ、 独自性が素晴らしいのです。

以下、そのシナリオと世界観、それを盛り上げる要素を分析していってみます。

絵本的ファンタジー

まず、「パンダとウサギ」、このタイトルから予想が付くように、 このゲームは動物達が主人公のゲームです。 つまり、絵本のような ファンタジーに満ちた演出があり、 こういった世界観の作品はコンテストパークの応募作品のなかではかなり 珍しい分類に入ります。
むしろ、「動物もの」について考えてみると、動物が脇役で出てくるゲームは 数多いものの、「全ての登場人物が動物」という徹底ぶりは、 コンシューマーを見てもなかなか見られず、 ありそうでなかった作品 といえるでしょう。

そう、このゲームの一番の特徴は、「全ての登場人物が擬人化された動物である」という点です。 つまり、動物達がメインであり、人間は出てきません。

では、これが他のゲームと比べて、どのような利点になっているでしょうか

「動物が主人公のRPG」というのはこれまでにもありましたが、 一般的な動物モノは、密猟者などの人間が悪者になっていることが多く、 それゆえに「動物を通じて人間のエゴを描く」といったような役割をしているの です。
一方、このゲームはもう少し擬人化レベルが高く、正義も悪も動物になっています。 敵キャラも動物であり、特にウサギ王国の兵隊もウサギ達であり、目つきが悪いのですが これがまた可愛い感じで憎めません。 仲間になる悪役、特にジージョは、良い味出しています。
このように、動物キャラにすることによって、人間の泥臭さを与えずに、 シリアスなイベントを盛り込むことが出来、さらにギャグを盛り込むことによって、 後腐れを与えずに、感動させるところは感動させている、というのがよく分かります。
勿論、人間と動物を出して「人間の悪を描く」というゲームと、 「パンダとウサギ」のように動物ばかりのゲーム、どちらも特長があって、一概に 「どちらがいい」とはいえないのですが、 後者のようなRPGは、前例が少ない分、かなりチャレンジであり、しかもそれを うまくまとめているは高く評価できます。

キャラが立ってます

そして、シナリオでは、登場人物である動物達の個性が出ており、彼らが繰り広げる シナリオがとてもいい感じを出しています。

特に、このゲームは顔グラフィックが豊富に使用されていて、これによって、動物達の存在感が引き立っています。 この顔グラフィック、主役達だけではなく、多くの脇役、村人などにも設定されている のにびっくりしました。凄いです。
僕は顔グラフィックというのはあまり興味が無かったのですが、 ことに動物ものとなると、顔グラフィックによる演出の大きさを かなり実感させられました。

主役となるメンバーも、毛色が違うキャラが多く、それぞれの個性があるので、 彼らが繰り広げるシナリオの方も、ギャグあり、 シリアスありでメリハリが出ています。
特に、ビーブの「自分のブロマイドを売るのだ」と、自分に惚れ込んでいるという 演出や、「盗賊トリオを作ろう!」と振られて、「え、ぼくも!?」と 驚くくまはち。思わず「かわいいやつ」と 微笑んでしまいます。
いやはや、この動物達、容姿のかわいさだけでなく、別の意味のかわいさも兼ね備えている。 かなりつぼにはまりまくりです。

笑いだけでなく涙もあり

しかも、そういったギャグだけでなく、シリアスな部分もあり、そこが このゲームを光る物にしています。
ラスト、ウサギ王国の科学者として機械開発の研究をしてきたゴンベエが 仲間になるのですが、彼の行動は、これまでの演出からでは及びもつかないほど 驚かせてくれました。ネタバレになるので書きませんが、是非プレーして 確かめて見てください。ショックを受けます。

このようにギャグ要素とシリアス要素の両方を盛り込んでいる点は、僕としては 高く評価したいのです。なぜなら、 僕たちは、ギャグあり、シリアスありの人生の中で 生きているからです。

よくギャグ路線一直線の漫画があります。かの有名な「魔法陣グルグル」を例に挙げますが、 これはニケとククリのおとぼけが楽しいし、楽しいときはそれでいいのですが、 シリアスになるべきところもおちゃらけで行っていたりして、どうも僕の 感性に合わないのです。真面目になったニケとククリをギップルが「くさ・・・」と 馬鹿にするようなシーンが多いところを見ても、 ギャグ路線だけでいく漫画は 収集がつかなくなっている感じがするのです。

だから、パンダとウサギのように、ギャグだけでなくシリアスな面も有った方がいい。 それが、そこまでギャグ中心だったシナリオに凛とした重さを 与えていて、実に気分のよいコントラストになっていると同時に、プレイヤーに 「ああ、僕たちも、いつも笑って暮らしているけど、こんな風に悲しくなることって あるよなあ」と共感させることに成功しています。

癒し系の一種とも言える秀作

このように、シナリオがいいのですが、この素晴らしさを一言で表すとすれば、 「癒し系」という言葉が当てはまるかもしれません。

「癒し系」というジャンルが出てから久しく、既に定着してしまった感じがあります。 本屋の一角を見ると、大抵その関連の書籍が平積みされています。 そういう本に引かれる人は若者だけではなく、意外にも中年層に多いとも聞きます。
そんな貴方にも、この「パンダとウサギ」は是非お勧めです。 動物達の可愛いグラフィックと、ほのぼのとしている中にギャグありシリアスありの 展開は、必ずや貴方を癒してくれることでしょう。

ファイルのダウンロードサイズが11メガにもなっており、そういう理由で ダウンロードするのをためらっている人もいるかもしれませんが、僕は 前述の通り、プレー開始5分後で「いい感じ」を体験したので、 子供好き、動物好きの人(僕のことだが)は是非どうぞ。


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