Gu-L

ジャンル:アドベンチャー
プラットフォーム:Win95/98 (RPGツクール2000作品)
作者:焼城ユブさん
種別:フリーソフトウェア
ダウンロード先:コンテストパーク内の2001年3月受賞作品
入賞歴など:コンテストパーク2001年3月銀賞(30,000円), 2000年度年間人気ランキング1位

ゲームの内容:修学旅行の高校生たち。バスの中で非常に幸せな時間を過ごしていた。 しかし、それらの時間は一瞬にして引き裂かれる。バスは事故に遭い大破。生き残った高校生達は 助けを求めるべく、雨の降り出した中、歩き回る。ほどなく洋館を見つけ一安心したのもつかの間。 彼らの元で史上最悪の「ゲーム」がはじまる。果たして隆也達は力を合わせて 洋館を無事に脱出することが出来るのだろうか?


年間人気ランキング1位を祝って緊急執筆なのです!

まず最初に。僕がこのゲームをプレーしたのは4月でした。後述しますが友人と一緒に やったのですが、1回クリアして、それっきりでした。どうも、Gu-Lは話を聞く限りでは 数回プレーしてパーティーや行動を変えるごとに深みが出てくるそうなので、 僕のように1回のクリアで細かいところを書くのは不適切かもしれません。
しかし!こんなおめでたいときにこそ、これまで書かなかった感想文を書くのが 仁義ってもんです。さらにいいことに、僕に丁度この文章を書くために 用意されたかのように、突如としてしばしの暇も出来たのです。 これはもう、まさにこうやってインプレッションを書いてユブさんに 「おめでとうござーい」のひと言でもかけてやろう、てな思いで書いております。

というわけで、この文章はあくまでインプレッションということで、 僕が感じたことを感じたままに述べていこうと思います。 まあ、有名なゲームだし、これを読んでいる人も既にクリアした人が多いだろうから、 「こういう視点もあるんだぞ」ってことで。

「あの映画」っぽいのに、それでいて優しさに満ちている作品

まず、僕のプレー前の印象から。
ユブさんは、Gu-Lの設定で、「あの映画」(そう、具体名は挙げませんが、修学旅行の高校生たちが離れ島に連行されて、 殺し合いを始める「あの映画」です。) に感銘を受けたといわれています。 実際、発表時にユブさんの掲示板で「ひょっとして『あの映画』に影響を うけていらっしゃいますか?」と聞いたら、「もろ受けています」みたいな答えが 帰ってきたので、ちょっと身構えたりもしました。

とはいえ、実際にプレーしてみると、その身構えは杞憂だったと悟り、安堵しました。 実にあの映画のいいところを吸収しつつ、自分のものとして昇華して 素晴らしい作品を作ったように思えます。

僕があの映画(というか原作)で拒絶したのは、 何よりも原作者が 「高校生たちが殺しあう」ということに対して何の意見も入れていなかった といった点です。 原作者は「史上最悪のいす取りゲームみたいなシチュエーションだったら面白いだろうな〜」 なんて感じで、完全に娯楽で作ろうとしていたというのですから、たまりません。
ただ、映画版はかなりソフィスティケートされていたな、という印象を受けました。 監督の力、そして北野武の力(特にあの絵)が大きいと思います。 「なぜ、高校生が殺し合いをしなければならなくなってしまったのか」をかなり鮮明に 描き出した上で、我々の現代社会の持つジェネレーションギャップによるお互いの無理解などが 悲劇を起こしうる、という警告を導き出したのですから。
要するに、僕は暴力描写が問題というよりむしろ、「暴力から何も考えない」ことの方を恐ろしいことだと考えているのです。

閑話休題、ユブさんの作品には銃やナイフといった、「その映画」をほうふつとさせる フィーチャーが登場しています。しかし、ユブさんの作品は「戦うべき対象」が明確である上、 高校生たちがその敵に向かって助け合っています。さらに、そこで協力し合いながら 見えてくる友情と葛藤、これがまたいいのです。
まさにこれは青春ものではないでしょうか!

ホラーよりむしろ青春ものとしてよく出来たシナリオ

そう、Gu-Lは「ホラーものとして完成されている」という意見を聞きます。 ホラーものが苦手&あまりやらない僕は、この点については肯定も否定も出来ません。
しかし、です。僕は何を楽しんだのかというと、まさに「青春もの」の それです。これはまさに現役(制作中は、ですね。現在は専門学校生だそうです)の女子高生の 生の実感が非常に入っているところが大きいのでしょう。 ユブさんはきっと、そういった日常感じていることを一つ一つ丹念にまとめ上げ シナリオを作っていかれたのだと思います。そしてその試みは成功しています。

一般的な作家にいえることなのですが、「自分で感じた喜怒哀楽や思いを、いかに作品に 反映するか」は非常に重要なことだといえます。ユブさんは自分の青春を 真っ白なキャンバスにぶつける思いでこのゲームを作られたのではないでしょうか。

僕は、Gu-Lとは、ユブさんが 自分の感じ、思い悩み、また楽しんだ「青春」というものを まさに忠実に作品に反映したものであり、 それゆえに「青春もの」なんだ、と感じました。 (そう考えれば、Gu-Lの学生たちが高校生、つまりユブさんのGu-L制作時の年齢と 一緒であるのも頷けます。)

友達は大切にしましょう。

そう、このゲームの中で感じたのは、今時の高校生達が 感じている仲間としての友情とか、そういった「うまく言葉に 表わせないもの」を、さりげない会話によって実現しています。

そんな中で特に大きなテーマだと感じられたのが、 隆のエピソードに出てくる、「友達は大切にしましょう」のくだり。 ここでジーンと来た人も多いでしょう。僕はきまくりました。
正直なところ、「人は一人では生きていけない」わけです。 こういった友情の大切さを謳ったスローガンは、よく目にします。 しかし、スローガンとして見ても、 心に響かないことが多いかもしれません。あまり実感が伴わないためです。
しかし、実際にこういう具体的なエピソードとして見ると違います。 なぜなら、エピソードによって喚起される何らかの感情が、 我々に普段気づかない部分の感情を思い出させてくれるからです。

我々は知らず知らずのうちに友達のことを 思って行動しているし、友達に限らず見ず知らずの人に席をゆずったり、 誰に対しても「さりげない思いやりの心」を持っているはずなのです。
誰も言葉に出すわけでもないのだけど、このシーンを見ながらこみ上げてくるものが あった人は誰でも少なからずこの心を持っているんだな、… こういったことを、隆を見ていてふっと思った僕でした。

そう、まさにこれこそが高校生の「青春」を司る大きな根源の一つなんだ、 そんな風に感じました。

以上のように、テーマについては、申し分有りません。 もちろん若干まとまりがなく荒削りな印象も受けるのですが、 まさにその荒削りこそが 生の高校生の声をダイレクトに反映しており、魅力的に しているように感じられました。そしてまさにそこが人気の理由に 違いないと思っています。

ゲームとしての面白さ

それでは、Gu-Lのゲームとしての面白さに付いてはどうでしょうか。これは人によって 大きく分かれると思うのですが、僕が感じた面白さを述べてみます。

センス

Gu-Lは、ユブさんテイストが前面に出ている世界観で、 よってセンスの良さは最高であり、ここを楽しめるかどうかが ポイントの一つになると思います。
個人的にはかなりお気に入りです。敵キャラ(口とか戌とか)、 サブキャラ(アバドンやダニエル)など、一癖ある連中ばかりで とても魅力的です。特にダニエルについては可愛いのか奇妙なのか 意見が分かれるところではないでしょうか(微笑)。

また、隆也を初めとする高校生の使う特技も、魅力です。 特に「自己暗示」はかなりお気に入り。「私(僕)は死なない、 私(僕)は大丈夫…」このボイスが好きになって何度も何度も かけつづけておりました。
言い忘れましたが、このゲームはところどころにボイスが入っています。 その中でも特に、自己暗示のようなボイスの使い方は、(独断ですが)白眉だと 思います。

謎解き

ご存知のとおり僕はホラー関係が苦手なので、 お約束のごとく友人と一緒にプレーしました。 ちなみにその友人はかなりこういう推理ものになれているらしく、 「あれ、今隆也目の色が違うね」と言いました。 どうやら、隆也と隆の関係を悟っていたようです。
何が言いたいのかといいますと、 「こういう伏線がきちんと張ってあるので、 ミステリー系になれている人は よりこのゲームの謎解きを楽しめる」ということです。

後、イベントにまつわる謎解きについて。4つの玉を12の台座にはめるものとか、 キーボードを見ながら解くイベント(実は僕が今使っているのはカナの刻印が無い 英語キーボードなのですが(^^;))とか、こちらも結構面白いです。

前述の通り僕は一度しかクリアしていないので このゲームの「奥深さ」については何も言及できません。 しかし確実に「時間があるならもう一度やってみたいよな」と 思わせるものを多く持っていました。

演出と世界観は金賞レベル

惜しくも、この作品は銀賞でした。Gu-Lノミネート中は、結構「金賞だといいですね!」という 声も聞きましたし、そうなるといいな、と思っていました。 しかし、演出や世界観、そしてユブさんの主張がにじみ出てくるメッセージのレベルは、 金賞を受賞してもおかしくないものだったと思っています。

では、どこが惜しかったのでしょうか。 これは、多くの人が指摘していることなのと(コンテストパークの読者の意見など。 誤字脱字が目立つといった話や、雑魚との戦闘がうざったい、といった話。 こういう細かい点の吟味こそがゲームとしては重要になってくるわけです。) 「お祝い」と称して書いているのに苦言めいたことはタブーってことなので 割愛しますが、やはりこういった話を聞きつつ、 「じゃあ次回作はどうやっていこうか」って考えていくことをすれば、 より洗練された作品が作れるようになると思うのです。是非とも、ユブさん、ファンの 声に耳を傾けつつ、次回作&Gu-Lのアップデート頑張ってください。

しかし、注意して欲しいのは、なにとぞ「ユブさんテイスト」を持ちつづけて欲しいのです。 仮に「世界観が合わない」という意見があったとしても、ユブさんが「自分の世界観に 会う人に向けて作っている」と思うのならば(そして、そう思いつづけて欲しい!) その意見を鵜のみにする必要は無いのです。 是非とも「自分が目指したい作品」のイメージをしっかり持ち、そのイメージを実現する 助けとなるような意見をきちんと受け取る、という姿勢で頑張っていってください! (Gu-Lの感想文ということで、ユブさんに向けて書いて おりますが、シナリオ重視のゲームを作っている人なら誰にでもこのエールを贈りたいと 思います。)

キーボードを休めてしばし考えてみたくなるゲーム

以上がGu-Lで感じたことを、筆の走るままに書いてみたものです。 いささか筆が走りすぎたきらいもありますが、このくらいのテンションは まあ、お祝いだから、ということで。 傍から見たら「かなりべた褒め」なんていう人も現れそうですが、このレベルのインプレッションが 書けそうなゲームは他にいくらでもあるでしょうし(まだプレーしていませんが、噂のSacred Blueシリーズとか プレーすると、僕自身いろいろなことが学べそうですし、インプレッションも凄いものに なりそうです。)僕のインプレッションとしてはいつものことですし、何より ユブさんの人徳もあるのだと思いますし:-)。


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