ゲームの内容:修学旅行の高校生たち。バスの中で非常に幸せな時間を過ごしていた。 しかし、それらの時間は一瞬にして引き裂かれる。バスは事故に遭い大破。生き残った高校生達は 助けを求めるべく、雨の降り出した中、歩き回る。ほどなく洋館を見つけ一安心したのもつかの間。 彼らの元で史上最悪の「ゲーム」がはじまる。果たして隆也達は力を合わせて 洋館を無事に脱出することが出来るのだろうか?
まず最初に。僕がこのゲームをプレーしたのは4月でした。後述しますが友人と一緒に
やったのですが、1回クリアして、それっきりでした。どうも、Gu-Lは話を聞く限りでは
数回プレーしてパーティーや行動を変えるごとに深みが出てくるそうなので、
僕のように1回のクリアで細かいところを書くのは不適切かもしれません。
しかし!こんなおめでたいときにこそ、これまで書かなかった感想文を書くのが
仁義ってもんです。さらにいいことに、僕に丁度この文章を書くために
用意されたかのように、突如としてしばしの暇も出来たのです。
これはもう、まさにこうやってインプレッションを書いてユブさんに
「おめでとうござーい」のひと言でもかけてやろう、てな思いで書いております。
というわけで、この文章はあくまでインプレッションということで、 僕が感じたことを感じたままに述べていこうと思います。 まあ、有名なゲームだし、これを読んでいる人も既にクリアした人が多いだろうから、 「こういう視点もあるんだぞ」ってことで。
まず、僕のプレー前の印象から。
ユブさんは、Gu-Lの設定で、「あの映画」(そう、具体名は挙げませんが、修学旅行の高校生たちが離れ島に連行されて、
殺し合いを始める「あの映画」です。)
に感銘を受けたといわれています。
実際、発表時にユブさんの掲示板で「ひょっとして『あの映画』に影響を
うけていらっしゃいますか?」と聞いたら、「もろ受けています」みたいな答えが
帰ってきたので、ちょっと身構えたりもしました。
とはいえ、実際にプレーしてみると、その身構えは杞憂だったと悟り、安堵しました。 実にあの映画のいいところを吸収しつつ、自分のものとして昇華して 素晴らしい作品を作ったように思えます。
僕があの映画(というか原作)で拒絶したのは、
何よりも原作者が
「高校生たちが殺しあう」ということに対して何の意見も入れていなかった
といった点です。
原作者は「史上最悪のいす取りゲームみたいなシチュエーションだったら面白いだろうな〜」
なんて感じで、完全に娯楽で作ろうとしていたというのですから、たまりません。
ただ、映画版はかなりソフィスティケートされていたな、という印象を受けました。
監督の力、そして北野武の力(特にあの絵)が大きいと思います。
「なぜ、高校生が殺し合いをしなければならなくなってしまったのか」をかなり鮮明に
描き出した上で、我々の現代社会の持つジェネレーションギャップによるお互いの無理解などが
悲劇を起こしうる、という警告を導き出したのですから。
要するに、僕は暴力描写が問題というよりむしろ、「暴力から何も考えない」ことの方を恐ろしいことだと考えているのです。
閑話休題、ユブさんの作品には銃やナイフといった、「その映画」をほうふつとさせる
フィーチャーが登場しています。しかし、ユブさんの作品は「戦うべき対象」が明確である上、
高校生たちがその敵に向かって助け合っています。さらに、そこで協力し合いながら
見えてくる友情と葛藤、これがまたいいのです。
まさにこれは青春ものではないでしょうか!
そう、Gu-Lは「ホラーものとして完成されている」という意見を聞きます。
ホラーものが苦手&あまりやらない僕は、この点については肯定も否定も出来ません。
しかし、です。僕は何を楽しんだのかというと、まさに「青春もの」の
それです。これはまさに現役(制作中は、ですね。現在は専門学校生だそうです)の女子高生の
生の実感が非常に入っているところが大きいのでしょう。
ユブさんはきっと、そういった日常感じていることを一つ一つ丹念にまとめ上げ
シナリオを作っていかれたのだと思います。そしてその試みは成功しています。
一般的な作家にいえることなのですが、「自分で感じた喜怒哀楽や思いを、いかに作品に 反映するか」は非常に重要なことだといえます。ユブさんは自分の青春を 真っ白なキャンバスにぶつける思いでこのゲームを作られたのではないでしょうか。
僕は、Gu-Lとは、ユブさんが 自分の感じ、思い悩み、また楽しんだ「青春」というものを まさに忠実に作品に反映したものであり、 それゆえに「青春もの」なんだ、と感じました。 (そう考えれば、Gu-Lの学生たちが高校生、つまりユブさんのGu-L制作時の年齢と 一緒であるのも頷けます。)
そう、このゲームの中で感じたのは、今時の高校生達が 感じている仲間としての友情とか、そういった「うまく言葉に 表わせないもの」を、さりげない会話によって実現しています。
そんな中で特に大きなテーマだと感じられたのが、
隆のエピソードに出てくる、「友達は大切にしましょう」のくだり。
ここでジーンと来た人も多いでしょう。僕はきまくりました。
正直なところ、「人は一人では生きていけない」わけです。
こういった友情の大切さを謳ったスローガンは、よく目にします。
しかし、スローガンとして見ても、
心に響かないことが多いかもしれません。あまり実感が伴わないためです。
しかし、実際にこういう具体的なエピソードとして見ると違います。
なぜなら、エピソードによって喚起される何らかの感情が、
我々に普段気づかない部分の感情を思い出させてくれるからです。
我々は知らず知らずのうちに友達のことを
思って行動しているし、友達に限らず見ず知らずの人に席をゆずったり、
誰に対しても「さりげない思いやりの心」を持っているはずなのです。
誰も言葉に出すわけでもないのだけど、このシーンを見ながらこみ上げてくるものが
あった人は誰でも少なからずこの心を持っているんだな、…
こういったことを、隆を見ていてふっと思った僕でした。
そう、まさにこれこそが高校生の「青春」を司る大きな根源の一つなんだ、 そんな風に感じました。
以上のように、テーマについては、申し分有りません。 もちろん若干まとまりがなく荒削りな印象も受けるのですが、 まさにその荒削りこそが 生の高校生の声をダイレクトに反映しており、魅力的に しているように感じられました。そしてまさにそこが人気の理由に 違いないと思っています。
それでは、Gu-Lのゲームとしての面白さに付いてはどうでしょうか。これは人によって 大きく分かれると思うのですが、僕が感じた面白さを述べてみます。
Gu-Lは、ユブさんテイストが前面に出ている世界観で、
よってセンスの良さは最高であり、ここを楽しめるかどうかが
ポイントの一つになると思います。
個人的にはかなりお気に入りです。敵キャラ(口とか戌とか)、
サブキャラ(アバドンやダニエル)など、一癖ある連中ばかりで
とても魅力的です。特にダニエルについては可愛いのか奇妙なのか
意見が分かれるところではないでしょうか(微笑)。
また、隆也を初めとする高校生の使う特技も、魅力です。
特に「自己暗示」はかなりお気に入り。「私(僕)は死なない、
私(僕)は大丈夫…」このボイスが好きになって何度も何度も
かけつづけておりました。
言い忘れましたが、このゲームはところどころにボイスが入っています。
その中でも特に、自己暗示のようなボイスの使い方は、(独断ですが)白眉だと
思います。
ご存知のとおり僕はホラー関係が苦手なので、
お約束のごとく友人と一緒にプレーしました。
ちなみにその友人はかなりこういう推理ものになれているらしく、
「あれ、今隆也目の色が違うね」と言いました。
どうやら、隆也と隆の関係を悟っていたようです。
何が言いたいのかといいますと、
「こういう伏線がきちんと張ってあるので、
ミステリー系になれている人は
よりこのゲームの謎解きを楽しめる」ということです。
後、イベントにまつわる謎解きについて。4つの玉を12の台座にはめるものとか、 キーボードを見ながら解くイベント(実は僕が今使っているのはカナの刻印が無い 英語キーボードなのですが(^^;))とか、こちらも結構面白いです。
前述の通り僕は一度しかクリアしていないので このゲームの「奥深さ」については何も言及できません。 しかし確実に「時間があるならもう一度やってみたいよな」と 思わせるものを多く持っていました。
惜しくも、この作品は銀賞でした。Gu-Lノミネート中は、結構「金賞だといいですね!」という 声も聞きましたし、そうなるといいな、と思っていました。 しかし、演出や世界観、そしてユブさんの主張がにじみ出てくるメッセージのレベルは、 金賞を受賞してもおかしくないものだったと思っています。
では、どこが惜しかったのでしょうか。 これは、多くの人が指摘していることなのと(コンテストパークの読者の意見など。 誤字脱字が目立つといった話や、雑魚との戦闘がうざったい、といった話。 こういう細かい点の吟味こそがゲームとしては重要になってくるわけです。) 「お祝い」と称して書いているのに苦言めいたことはタブーってことなので 割愛しますが、やはりこういった話を聞きつつ、 「じゃあ次回作はどうやっていこうか」って考えていくことをすれば、 より洗練された作品が作れるようになると思うのです。是非とも、ユブさん、ファンの 声に耳を傾けつつ、次回作&Gu-Lのアップデート頑張ってください。
しかし、注意して欲しいのは、なにとぞ「ユブさんテイスト」を持ちつづけて欲しいのです。 仮に「世界観が合わない」という意見があったとしても、ユブさんが「自分の世界観に 会う人に向けて作っている」と思うのならば(そして、そう思いつづけて欲しい!) その意見を鵜のみにする必要は無いのです。 是非とも「自分が目指したい作品」のイメージをしっかり持ち、そのイメージを実現する 助けとなるような意見をきちんと受け取る、という姿勢で頑張っていってください! (Gu-Lの感想文ということで、ユブさんに向けて書いて おりますが、シナリオ重視のゲームを作っている人なら誰にでもこのエールを贈りたいと 思います。)
以上がGu-Lで感じたことを、筆の走るままに書いてみたものです。 いささか筆が走りすぎたきらいもありますが、このくらいのテンションは まあ、お祝いだから、ということで。 傍から見たら「かなりべた褒め」なんていう人も現れそうですが、このレベルのインプレッションが 書けそうなゲームは他にいくらでもあるでしょうし(まだプレーしていませんが、噂のSacred Blueシリーズとか プレーすると、僕自身いろいろなことが学べそうですし、インプレッションも凄いものに なりそうです。)僕のインプレッションとしてはいつものことですし、何より ユブさんの人徳もあるのだと思いますし:-)。