この文章は、神楽さんから、僕こと神無月サスケに
誕生日プレゼントとして贈っていただいたものです。
神楽さんの許可をいただいたので、公開します(2003.10.26)。

なお、神楽さんのHPはこちら:「シークレットな子供達」
白と黒は、


合わさることが出来るのだろうか?







彼女が見るモノクロの世界








ぜのん達がかよう幼稚園に、今日は中学生の人がくるらしい。
一日職場体験学習と言う事らしく、幼稚園内部ではその噂で持ちきりだった。
だが、それ以外にももう一つ騒がれる噂があった。
この街に、最近「ブレイカー」と名乗る怪人が出没しているらしいのだ。

「うわさだとねっ、まっくろな服を来てるんだって!」
「えっ?僕はオレンジ色の髪をしてるってきいたよ?」
「それより、ぶれーかーってどう言う意味なんだろうね?」

主に夜になると出現し、出会った人間を闇の世界へ引きずり込むとか。
そんな噂が飛び交い、親達はかなり警戒をしていた。
闇の世界に引きずり込むどうこうより、そんな怪しい人間がいるのが気味悪いのだろう。

「みなさん、おはようございまーす!」

口々にささやかれる中、やがて時間が過ぎツルタ先生とマックスが入ってきた。
今までしゃべっていた園児達も、皆静かになる。

「今日は、昨日も言ったとおり中学生のお姉さんがやってきまーす!」
「みんな、元気にあいさつするにゃー!」
「はーい!!」

声をそろえた返事が、凄くかわいらしい。
生涯で一番短くて、一番記憶に残りにくい時代。
こんな子供達が何時までもどんな世界にも居れば良いのに。

「おはようございます!」
「「「「「おはよーございまーす!!」」」」」

入ってきた中学生は、女の子だった。
笑顔で挨拶を交わして、中央へと歩いてくる。
なんだか妙に、不思議な人間だとマックスは感じた。

「○×中学校から来ました、コユキです。
今日一日だけだけど、皆よろしくね!」


***


「ほら、此れで鶴の完成だよ。」

ぴしっと整えられた線の鶴が、机に並べられる。
コユキの周りを取り囲む園児達が歓声をあげた。
その手先の器用さには、皆驚くばかりだ。
普通の折り紙の僅か4分の1にもみたたない紙で、綺麗な鶴を折ったのだから。

「おねーちゃん!鬼ごっこしよう!」
「花飾り作ったの!あげるー!」

何の偽りも無い笑顔が、コユキに向けられる。
コユキはそれに喜びを感じていたし、楽しいと思っていた。
誰もがそんな彼女の事を歓迎し、遊びに夢中になっている。
ただ一人、マックスだけを除いて。

「・・・なんだか変な感じがするにゃー。」

どうもコユキの持つ雰囲気は、他の人間とは違う。
もっと別の、何かを通ってきたかのような異色感。
それだけが拭い切れず、マックスはずっと考え込んでいた。

「見かけはただの中学生なのににゃー・・・」

不意に、園児たちと遊ぶコユキと目が合った。
瞬間、クスッと言う笑い声がマックスに聞こえてくる。
確実にコユキの笑った声だ。

「・・・?」

やはり、何かが違う。
そんな思いをマックスが抱いたまま、時間は過ぎていった。

「今日はありがとう、子供達も皆喜んでくれたわ。」
「いえ、私も楽しかったです。」

瞬く間にやってきた放課後、コユキはツルタ先生に見送られる。
だが玄関先まで来たとき、ふとコユキは突然歩みを止めた。
玄関に、二人の園児が立っていたのだ。

「ねぇ、コユキお姉ちゃん!一緒に探検しに行かない?」

なるみがコユキの服の裾をつかみ、にっこり笑って言う。
隣でぜのんも見上げていて、なんだか微笑ましかった。
コユキはクスッと笑って膝を曲げると、二人の目線に合わせる。

「ごめんね、此れからやる事があるんだ。」
「やること?」

コユキはなるみの頭を撫でて、かすかに微笑む。
そして元の目線に戻ると、玄関から一歩踏み出した。

「ぜのん君、Xレンジャーに宜しく!」
「!?」

顔だけを振り向かせたコユキに、ぜのんはマックスと同じ感覚を抱いた。
何かが違う、何がと言うのはわからないが、何かがだ。
それに「Xレンジャーに宜しく」とはどう言う事だろう。

「Xレンジャーの知り合いかな?」

分からないといった表情で、ぜのんはきょとんとする。
コユキは歩き去ったが、何故か気にかかる。
今日だけで職場体験は終わりらしい。しかし、また合えるような気もする。

「ぜのん君、Xレンジャーに聞いてみようか?」

迷うことも無く、ぜのんは頷いた。
勿論マックスも連れて、今日の探検を始める。



***



「え、コユキ?」

早速なるみとぜのんは、Xレンジャーにコユキの事を聞いてみた。
だがXレンジャーは首を傾げるばかり、何も知らないらしい。

「それより、最近ブレイカーとか言う怪人のせいで暇なんだ。」
「どうして?」

闇の世界に引きずり込むと言われる、ブレイカー。
それが居ると何故、暇になると言うのだろう。
マックスは少しだけ小難しい顔をして、その話を聞いていた。

「いや、私が駆け付けた時にはもう事件が解決してるんだよ。
勿論、あの噂のブレイカーの手によってね。」

どうやら、噂と実際は何か違うらしい。
まぁ、大抵の噂は尾ひれなどがつくものだが。
すると突如、退屈そうにしていたXレンジャーが顔を上げた。

「大変だ、神社で子供が襲われている!
君達は処所に居なさい!!」

はい、非常にお約束ですが。
危険だから処所に居ろと言いたいのなら、
場所を口に出さない方が良いと思われます。
勿論、ぜのんやなるみがついていかない筈は無い。

「Xレンジャー!」
「ぜのん君!なるみちゃん!マックス!」

やっぱり、と言った表情でXレンジャーはぜのん達の呼びかけに答える。
だが、神社には何も起こっていなかった。
そこにはただ、親に保護されながら泣いている少年と、
倒された後の怪物が気絶しているだけ。

「また先を越されたか・・・」
「ねぇ、ブレイカーっていい人なの?」

子供を助けたと言うのなら、良い人間なのだろう。
それならば噂は、一体どう言うことなのだろうか。

「Xレンジャー。オイラ、ブレイカーの目星がついたにゃ。」

マックスの言葉に、Xレンジャーだけではなくなるみ達も反応した。
一体誰が、ブレイカーなのだろう。知っている人間だろうか。
この街にすんでいる人間ではないかもしれない。

「実際は分からないけど・・・多分、ブレイカーは―――――・・・」

マックスが言いかけた、その時。
突然神社で遊んでいた女の子が悲鳴を上げた。

「くそーーーッ!!お前等皆幸せそうに笑いやがってーーッ!!」

神社の建物の、丁度真前。
サングラスをかけた巨大なモグラが顔を出し、何かを喚いていた。
そして子供達を襲おうと、鋭い爪を振り乱している。

「大変!Xレンジャー、倒さなきゃ!」
「分かってるよ!」

このままでは子供達が怪我をしてしまう。
Xレンジャーは


「Xブラスター!!」

光がXレンジャーから放たれた瞬間、突然モグラは消えた。
土の中に潜って、攻撃を回避したのだ。
しかも土の中に居られては、何処から出てくるかも分からない。
地面から不意打ちで攻撃されると言う可能性だってあるのだ。

「きゃあ!!」
「なるみちゃん!」

だが予想に反して、モグラはなるみの元へ出てきた。
そして片手でなるみをつかむと、鋭い爪を当てる。
最初から、なるみを人質に取るつもりだったのだ。

「卑怯だぞ!!」
「うるさい!俺達を倒して正義だの何だの喚いてる奴に言われたくないわッ!!」

モグラの爪が、光を反射して鈍く光る。
このままでは助けることさえかなわない。

「正義がどれだけ無力か思い知らせてやるッ!!」

モグラが爪を地面に突き刺し、なるみを人質にしたまま潜ろうとする。
Xレンジャーが食い止めるために走り出した、その瞬間。
不思議な程に優しい風が、その場に吹いた。

「な・・・なんだ!?」

モグラは驚きに身を止め、空を見上げる。
そして同時に、頭部に何か衝撃が走ったことに気づいた。

「マスター♪人質救出完了だよーっ☆」

噂では、ブレイカーは二つの容姿を持っている。
一人はオレンジ色の髪をして、物凄く背が高い。
そして一人は黒装束を着た、小柄な人間。

「まさか・・・2人いたなんて・・・!」

モグラの頭部を蹴りつけ、そのまま頭の上に座っているのはオレンジ色の髪の青年。
頭を抱えて痛がっているモグラの手から、なるみを救出している。

「くそっ、誰だ!!」
「僕はカルラ、風の化身でぇーっす♪」

オレンジ色の髪の青年、カルラが笑いながらそう言う。
風がふわりとカルラとなるみを包むと、二人は浮き上がった。
驚きに目を丸くしたのは、モグラだけだった。

「風の化身って・・・?」
「僕はねー、風そのものなのっ♪」

風が実体を持って生きている、そう言えば簡単だろうか。
だが園児にはそんな難しいことより、空を飛べたと言う喜びのほうが大きいらしい。
僅かな風に乗って浮き上がるカルラは、なるみをぜのんの元へおろした。

「さてっ、覚悟してよモグラさーん☆」
「どいつもこいつも、正義面しやがって!!」

カルラがオレンジの髪をなびかせて、風を自分の腕に集める。
突然のことで事態を飲み込めないで居るマックスは、
かつて時の神殿で聞いた話を思い出した。

「アイツは今、人間と共存する唯一の自然の化身だと聞いたにゃ!」
「あっ、僕も君の事知ってるよ♪マックス君でしょーっ☆」

この街にも風の神様は居る。
だが「神様」と「化身」はまた何か違うらしい。
しかし、神様と違うとは言えこうも神秘性が無いと困るものだ。

「何をごちゃごちゃやってる!」

カルラの登場で半ば忘れられかけていたが、(て言うか忘れてた)
まだモグラは倒されておらず、健在だ。
カルラに蹴られた頭も、もう回復したらしい。

「正義なんてどうせ上っ面だけでしかないくせに!」

モグラが、また地面に潜ろうとした時。
今度は突然、別の声が聞こえてきた。

「そうだね、何かを殺すことが悪なら・・・
悪を殺す時点で正義も悪なんだろうね?」

それと同時にその場の雰囲気が一変したように思う。
何かに飲み込まれそうな、そんな雰囲気。
太陽の光が降り注ぐ昼だと言うのに、真夜中のように感じた。

「まさか・・・ブレイカー!?」
「え・・・でもあれって!!」

なるみ達が目にしたのは、つい先程あったばかりの人間。
黒装束を身に纏った、コユキである。

「闇夜に引きずり込むって・・・こう言うことなのか?」

確かに、コユキが纏う雰囲気はそんな感じだ。
漆黒の黒髪と、それと同じ色の眼が印象的でもある。
噂とはつくづく当てにならないものだと、実感した。

「くそっ、多勢に無勢だとは卑怯だなッ!!」

コユキはクスッと笑って、焦りを見せるモグラに近づいた。
その仕草は、幼稚園に居たときと何も変わらない。

「君には何か理由があったんだろう?」

ぐっと言葉に詰まらせたモグラは、憎々しげな顔で語り出す。
コユキも、ぜのんやなるみ達も、それを遮ろうとはしなかった。

「俺は・・・この神社で子供達にいじめられて死んだ・・・
死んだ後は皆気持ち悪がって近づかない・・・
仲間達だっておんなじ用な思いをして死んだ!
だから俺達をそんな風にしておいて幸せそうに笑って、
都合が悪くなったら不幸面しやがる人間に何か復讐したかったんだ!!」

何時でも、動物達が死んでいるところは目にする。
しかしそれに対して何も思わないと言うのは、ほぼ万人共通だ。
可愛そうだとは思うかもしれない、しかしそれ以上は思わない。

「正しいね、だから私は君を倒すつもりは無い。」
「何だと!?」

コユキの言葉に、モグラだけでなく回りも驚いた。
だがコユキは平然と笑って、モグラにまた近づく。
その漆黒の眼に吸い込まれそうになりつつ、モグラは呆然とした。

「仲間のために戦えるって言うのは、良い事だよ。
きっと君達にとっては、人間が魔王みたいなものなんだろうね?」

何時だって、被害者は人間だとばかり思われている。
だが、虫達や動物にだって生きたいという気持ちはあるのだ。
寧ろ人間よりも生きる事に対する気持ちは強いだろう。
生き物の中で、自分で命を絶とうとするのは人間だけなのだから。

「でも、少しだけ考えてくれる?」

きっと、今回のように。
動物達に戦う力があったなら、人間は倒されていただろう。
それはさながら、ゲームの中の魔王のように。
そしてゲームの中の悪役だって、生きるために人間を倒そうとする。
もし動物達が襲ってきたなら、人間は生きるために倒すだろう。
ようはどっちもどっち、倒される方ばかりが悪いわけではないのだ。

「カルラと私も、こうして一緒に生きてる。
だから何時か、共存できる世界が出来ると思わない?」

コユキはモグラの手を取って、クスッと笑う。
すると今までモグラのかけていたサングラスは外れ、目があらわになった。
モグラの目から流れていたのは、涙。この時の涙を、ぜのん達はずっと忘れないだろう。



***



「申し訳無い、助けていただいて・・・」
「あっ、良いんだよ☆Xレンジャーさんは気にしないでー♪」

カルラはけらけら笑って、真面目なのか何なのか分からない調子で言った。
このハイテンションにどう対応して良いかも分からず、Xレンジャーは戸惑う。

「ま、頑張ってる人が失敗するのはカッコイイからねっ♪
僕はそうやって、頑張ってる人が大好きだなー!」

それは驚くほど、純粋な言葉だった。

「さて。帰ろうか、カルラ。」

此れから、モグラは人間達と暮らせるよう何かやってみるらしい。
そのために手伝いぜのんやなるみ、マックスも手伝うそうだ。
勿論、Xレンジャーも。

「ちょっと待つにゃ、聞きたい事があるんだにゃ。」
「ん?」

短く返事をしたコユキは、マックスの方を向く。
マックスはずっと気にかかっていたことが、ようやく分かったのだ。
だがそれは確信ではない、だから最後に聞いて見る。

「この世界の・・・Xレンジャーの世界の人間じゃないにゃ?」

一瞬だけ、コユキは表情を変えた。
だがすぐにクスッと笑うと、マックスから背を向けた。

「ちょっと待つにゃ!一体お前は何のために処所に来たんだにゃ?」
「興味があったんだよ、正義の味方ってヤツに。」

この世界は本当に面白い。
一体何が起こるか、全く分からないのだから。
しかしそれは、人生を楽しむ一部の人間にしか味わえない楽しさ。

「何時までもどんな世界にも、子供の笑顔がありますよーに。」

ぶっきらぼうに、コユキはそう言い残して消えた。
だが、もし笑顔が失われたら、その時は・・・
また彼女が、ブレイカーがやってくるだろう。
笑顔の無い世界を「壊し」に、そして共存できる世界を作るために。


「じゃあね、ぜのん君!何時でも強くありなよ。」


彼女は何時でも、白黒の世界を見ている。
白と黒が共存しあう、そんな世界を―――――・・・


ごめんなさい!!
随分と私のオリキャラばかり出張っちゃってごめんなさい!!
最初はこの話の半分以下の話だったんですよ。
でも無理でした、私に短くまとめるのは無理でした。
根っからの長文書きのようです・・・ごめんなさい。

誕生日プレゼントもかねて、サスケさんにお送りいたします。
それでは、また!!

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